禁煙問答集 2004
なぜ、今の時期に「学校敷地内禁煙」をするのか
1 「健康日本21」に沿った健康プランが策定され、県としての方針が出されたこと。
その中で
@青少年に喫煙を開始させない
A非喫煙者の健康を守る
B喫煙者の禁煙サポートを行う
という3つの方針の元に、教育関係では「学校敷地内禁煙とする」ことが明示された。
県庁の知事部局でもこの指針にもとづき、現在庁内のたばこ対策を検討している。教育委員会としては、指針を重く受け止め、指針の実現を図りたい。
2 現在中学・高校生の喫煙はたいへん大きな問題で、
「制服を着て通学途上高校生が喫煙してる」
「駅などで座り込んで中高生らしき集団が喫煙している」
ということを多くの人が憂慮しており、一般の人からの苦情や対策の要望も絶えない。
また、高校生の喫煙経験者率(常用者だけではない)は50%近くになるなど、早急な対策が求められている。
「学校敷地内禁煙」はある意味では喫煙をはじめとする青少年の健康問題に教育委員会、学校が本気で取り組むことの決意の表明である。
3.2003年から健康増進法が発足して,学校は受動喫煙を受けるような環境ではいけないという管理者責任が問われる時代になっている.学校は最優先で対策を講ずべき場所である.法律では,吸う人が悪いのではなく,吸わせている校長= 管理者の健康管理への姿勢が問われている.引いては,学校を管理する教育委員会や自治体の管理責任が問われる時代になったと考えるべきである.
グランドであっても,廊下であっても,タバコの臭いがするような学校は,「法律違反」の時代になっている.規則を守るのを教えるのは,学校の大きい役割と考えると,対策をなにも講じないのは,問題である.校長の管理・危機意識の能力が問われる事例である.
子どもは法律で禁じられているが、教員=大人にまで禁煙を強制するのはおかしいのでは。
1 喫煙者にたばこを吸うことをいっさいやめ、禁煙をせよといっているのではない。あくまでも、学校敷地内とう場所を限定し、そこで吸わないように協力を求めるものである。
自己責任で他者に迷惑のかからない方法で吸うことまで、禁じようというのではない。
2 携帯電話の使用は本人の自由、車の運転も本人の自由、大きな声で歌うのも本人の自由、しかし、携帯電話を使用してはいけない場所、個人の車を駐車してはいけない場所(例えば県庁内や県内の学校の一部)、静かにしなければならない場所を設けることは問題ではない。
喫煙についても同様である。
3 航空機内は国際線も含めて禁煙で、欧米では空港施設内禁煙(喫煙コーナーがない)も珍しくない。企業でも本社工場敷地内、あるいは本社ビルのすべてを禁煙にしているところがある。そこで働く人ももちろんその場所ではたばこを吸わない。
教育に携わる者に対して、学校という特別の目的を持った場所で職務の性格上たばこを吸わないことを求めるのは不合理ではない。
なぜ学校が敷地内禁煙なのか。喫煙室を作って分煙ではいけないのか。
1 平成7年に厚生省はたばこ対策の方針を決め、社会の分煙を進めることを全国に通知している。また文部省も、これを受けて全国に通知した。
そこでは分煙のランクを次の3つに分け、学校は最もレベルの高い分煙、つまりその場所は禁煙を原則とするとしている。
1)禁煙原則:医療機関、学校、児童福祉施設
2)分煙の徹底:公共交通機関等
3)分煙の取り組み:その他の場所、未成年が多く集う施設
学校は「公共施設」であり、「児童生徒の教育の場」であることから、最も厳しい分煙のランク、つまり禁煙を原則とするところとされた。
2 小学校、中学校、高等学校の「保健体育」、「薬物乱用防止教育」で喫煙の健康への害、受動喫煙による周囲のたばこを吸わない人への害を学習することになっており、その指導者はその学校の教員である。
禁煙教育をやっている場所で、例え特別の部屋の中とはいえ(児童生徒には先生が吸っていることがよく分かる)教師が喫煙することは、喫煙防止教育の実施と大きな矛盾となる。喫煙防止教育では20歳未満の喫煙を問題にしているのではなく、喫煙の健康への害、他者への害を問題としている。
なお、日本学校保健会発行(事実上文部省編集)の「飲酒・喫煙。薬物乱用防止教育の手引き」では、教師の喫煙が生徒の「喫煙モデル」になることを指摘している。
子どもたちを健康に育てるとう教育の高い使命を考えれば、その仕事に従事する者に敷地内禁煙を求めることは不合理ではない。
3.喫煙室から出るタバコの副流煙は,グランドや校舎の中へ流れる.先生を呼びにいった子供や掃除に入る子供たちへのタバコ煙曝露は避けられない.煙の漏れない部屋を作るには,極めて高度な排気施設を付ける必要があり.その喫煙室の設置費用は莫大である.維持費も高い.学校という特殊な場所に,高価な喫煙室を作り維持する経費を捻出するのは批判の対象になるだろう.
4.喫煙者の吐く息の中に高濃度の一酸化炭素が含まれる.タバコの煙に含まれる一酸化炭素を吸い込むためである.(ほぼ20本吸う人は,20ppmくらい.30本は30ppm.10本前後でも15ppmくらい.一度タバコを吸うと12時間以上一酸化炭素の吐き出しが続くので,喫煙者は常に有毒ガスをはき出していると考えられる)職場における空気環境基準の一酸化炭素濃度は10ppm以下である.喫煙教師の吐く息は,環境基準を超える毒ガスとも考えられる.吸った直後はさらに高濃度で,ニコチンやその他の有毒ガスも吐いている.児童の健康を最優先に考えるには,喫煙教師の存在自体が問題になる.喫煙室を作って,授業の合間ごとに喫煙を続ければ,常に高濃度の一酸化炭素を教室にばらまくことになる.学校には喫煙室を作るべきではない.
敷地内禁煙をするのはこの地区ではないか
1、都道府県教委として「学校敷地内禁煙」の方針を明確に示したのは和歌山県が最初である。しかし、学校単位で敷地内禁煙を実施しているところ、運動会なども「参観日」としての位置づけから保護者にたばこを吸わないよう求めている学校はある。
たばこ対策を考えている他府県から問い合わせもあった。
2、世界的にはアメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、アジアの多くの国では医療機関、学校等教育施設、公共交通機関は「禁煙区域」としているところが多い。
個人の自由を最大限尊重する国でも、公の場、とりわけ教育の場ではその施設や機関の目的から喫煙を制限することは当然とされている。
3 現在社会の分煙は急速に進んでおり、ビル内、商業施設内、公共交通機関のほとんどは徹底した分煙の方向に進んでいる。
そう遠くないうちに医療機関や全国の学校の禁煙が普通になる可能性が高い。
喫煙は嗜好であり、本人が好きで吸っているのだから、喫煙を悪くいうのはおかしい。
1 確かに喫煙は「嗜好」である。という考え方は根強いが、現在,喫煙は「薬物依存症」と考えられている。
もし、「嗜好」、つまり本人の好みであれば、他の食べ物のように、時と場所を選んで、自分でコントロールして食べればよいが、「薬物依存症」であるから1時間に1本以上、ヘビースモーカーで1時間に2本以上吸い続けることになる。
2 喫煙者の6〜7割の人は「たばこをやめたい」「本数を減らしたい」 と考えているという調査結果がある。やめたい、本数を減らしたいと思っている喫煙者が過半数いることを考えれば、たばこは「好きで吸っている」とは言い難い。
3 喫煙を薬物依存症=病気として、現在各地に「禁煙外来」が出来ている。薬物を補助に使ったり、カウンセリングにより喫煙者の禁煙をサポートして、多くの禁煙成功者を出している。
また、禁煙補助剤の「禁煙ガム」が市販可能となり、現在薬局薬店で販売が始まっている。
県内にも禁煙外来を開設する病院・医院があり禁煙=薬物依存症からの脱却を指導・サポートしている。新しいニコチンパッチなどさらに有効な禁煙補助薬が出てきており,県によっては費用補助事業をやっている県もある.また、保健所や市町村でも 「禁煙教室」を実施し、禁煙希望者をサポートしている。
敷地内禁煙にしたがわず、喫煙した場合どうなるのか、また保護者や外来者はどうなるのか
1 「学校敷地内禁煙」は設置者として教育の目的に鑑み、子どもたちの健康を守り育てる、非喫煙者の健康を守る、喫煙者の健康リスクを下げることを目的に「方針」として実施するもので、法律や条令ではない。
したがって罰則を背景に推し進めるものではないので、最大限の理解と協力を求めるということになる。
2 諸外国では法律によって規制をしているところがほとんどであるが、日本では「自主規制」主で、現在デパートや、スーパー、駅その他の公共施設でも、喫煙者の理解と協力で禁煙・分煙が守られている。
3 学校敷地内禁煙であるので当然、保護者、外来者にも協力を求めていく。県教委としても様々な機会に県民・保護者にそのことを訴えていく。
運動会での保護者の喫煙、PTAの会議での喫煙など苦情も多い。教育の場であることを考えればほとんどの人が協力をしてくれるはずである。
突然の「学校敷地内禁煙」は喫煙者にとってあまりにも酷ではないか
1 「自分がたばこを吸う、吸わない」、「吸いたい、吸いたくない」という観点ではなく、学校という教育の場がどうあるべきかという観点を大切にしてほしい。
同時に、現在の児童生徒の生活行動を見たとき、教育委員会・学校が今何をしなければならないかということも十分に考えてほしい。
そういう観点で考えたとき、児童生徒の現在と将来の健康を最大限配慮すれば、学校敷地内禁煙は決して特別なことではなく、ごく自然なことであるといえるのではないか。
2 日本では喫煙に対し比較的寛容であった歴史もあり、喫煙者にとって突然学校でたばこを吸うなといわれると、納得できない部分があることは、ある程度理解できる。
しかし、社会全体のたばこについての考え方、たばこ対策、喫煙規制はすでに以前から相当進んでおり、公共交通機関、医療機関、公共施設をはじめ、デパート、スーパーマーケット、コンビニ、その他の小売店、ファミリーレストランでは、積極的な禁煙・分煙が実施されている。
民間企業でも本社、工場敷地内全禁煙、ビル内全禁煙を実施しているところもあり、社会の時流を考えれば、学校だけが旧態依然としているわけには行かず、決して突然ではない。
2 平成7年に厚生省、文部省が学校は原則禁煙を打ち出し、平成11年には県教委が、禁煙・分煙を徹底し、児童生徒の前では喫煙をしないよう通知を出している。
また、喫煙に関してさまざまなニュースが報道されており、喫煙 者もそのことは理解しているはずである。
教員、教育委員会関係者であれば、小中高等学校の教科書に喫煙 に関してどのような記述があるか、薬物乱用防止教育で喫煙がどのように位置づけられているかを考えれば、「学校敷地内禁煙」の意味が理解できるのではないか。
喫煙者の喫煙の権利はどうなるのか 喫煙室を作るべきではないか
1 喫煙は「自由」であって「権利」とは言い難い。自由は最大限尊重されなければならないが、公共の福祉、特に学校という施設・教育機関の特殊性を考えれば、喫煙の自由を規制することは十分社会的に納得が得られると思う。
2 日本の喫煙者は一人あたり世界平均の約倍の本数を吸っている。このことは規制される場所が少なく、自由に喫煙することから本数が増えていると考えられる。
当初、喫煙者にとって酷とも受け取れる面はあるかも知れないが、結果的に喫煙本数が減り、例え一部でもこれを機会に禁煙に成功できれば、本人にとっても家族にとっても、もちろん教育界にとっても大きなプラスである。
3 限られた教育予算から「喫煙室」を作ることが優先されるかどうかは疑問である。みんなが使える休養室や教職員の図書室などを作れという要望もある。また子どもに還元できる予算の使い方を求める声も多い。自治体に無駄な投資を行ったということで,喫煙室設置費用を返却することを求める裁判も起きている.費用をかけないで最大の効果を得るためには,屋内禁煙が最も有効であるという根拠である.
喫煙そのものは健康によくないこととされており、国を挙げて喫煙率を下げようとしている。そのようなとき、他のことよりも優先して喫煙室を作ることが納税者の理解を得られることか検討の必要がある。
教育委員会は何をすればよいのか
1 4月実施に向けて、定例の会議等を活用し、管内関係者の理解と協力を得られるようお願いしていただきたい。
また保健部局、保健所等と連携し、喫煙についての広報活動などを実施することも効果的である。
2 学校には出来れば敷地内禁煙の張り紙、看板等を設置できれば望ましい。
3 喫煙に関する講演会、研修会の必要があれば講師の紹介等、県教委がサポートすることは可能。
教育委員会も禁煙にしなければならないのか
1 平成8年に労働省(現厚生労働省)は職場における喫煙対策のためのガイドライン」を策定し、非喫煙者に受動喫煙による被害を与 えないよう、職場の適切なたばこ対策を求めている。
****県たばこ対策指針では、行政機関は住民の健康を守る立場 から率先して庁舎内終日禁煙を実施する」としており、各教育委員会でも十分検討いただきたい。
「喫煙は個人の自由。国が許すのだから権利もある」
受動喫煙で他人を殺す権利はない。国がやってきたことが全て正しいと信じるのは、あまりにお人好し。大切な家族の将来が、あなたの健康にかかっている。一人だけの人生を生きているわけでない。
「税金を納めて非難されるのは腹が立つ」
タバコ病による医療費損失が多すぎて一箱600円以上にしないと国は損している.喫煙者は社会のお荷物になっている.
「タバコを好きな人と嫌いな人の共存が大事」
止めたくて止められない中毒になった人をタバコが好きな人とは言わない.好き嫌いの問題でなく,発ガン性を有する中毒性薬物という認識を持つべきで,明らかな有害性が分かった限りはタバコ全廃をすべき.
「タバコを吸っても90歳まで元気な人を知っている」
戦争で生き残った人が、戦争なんて安全だと言っているのと同じ。
「いまさらやっても、死ぬときは同じ」
禁煙のいい効果はすぐに現れる。高齢者でもやると生活の質がぐっと良くなる。10年続けるとリスクは非喫煙者と同じになる。
「禁煙はファッショ。一方的な規制は法律違反」
法律や喫煙を巡る現状を知らない人の時代錯誤のコメント.喫煙の害が明確になって、関連死亡者が増大している現状は紛れもない事実。時代の流れに応じて健康増進法のような厳しいタバコ規制が法律となった.「今は何も喫煙対策をしないのが,法律違反」が正しい.
「タバコは大人の嗜好品。ぼくは自由が好き」
喫煙するサルや,ネズミが実験的に作れる.体内のニコチン濃度を維持するために,ニコチンを補給しつづける.ニコチンに強い中毒性があるから.生活がニコチンの指示で動いていく.喫煙者に本当の自由はない.
「タバコは歴史を越えた文化だ」
この数十年で爆発的に消費が増えた前代未聞の合法的な覚醒剤.文化ではなく,薬物依存病である.タバコのない時代の日本に,文化は無かったというのと同じ.タバコが無い時代にもすばらしい文化は育つ.