公立学校共済組合
東北中央病院
大竹 修一 [email protected]
990-8510
山形市和合町3-2-5
電話 023-623-5111
このページの最終更新日は 08/05/21 です。
禁煙外来 よくある質問 禁煙外来のＨＰに戻る）
Q１．なぜ，同じニコチンなのにタバコは止められなくて，ニコチンパッチは止められるのか？ こんな毒を貼って大丈夫なのか？
タバコには快感があるが，ニコチンパッチには快感が無いからです．
喫煙によって脳のニコチン濃度が急速上昇するのに対して，ニコチンパッチは，一定濃度のニコチンしか入らないので快感がないのです．快感が無い代わりに，禁断症状も起こしません．だから，必ず，ニコチンパッチは要らなくなります．２ヶ月以上，使い続ける人は極めて少ないです．
＜詳細＞ ニコチンパッチは劇薬指定の薬です．タバコ一本のニコチンで，子ども一人を中毒死させるだけの毒物です．神経毒として殺虫剤の成分にもなります．確かに使い方では怖い薬ですが，少量かつ頻回のニコチンでは，タバコを吸っている人はよく分かっていらっしゃるように，他に代え難いようなリラックス，気分的な爽快感などが得られます．
喫煙によって，肺に入った煙からニコチンはすぐに血管に吸収されて，数秒のうちに脳に達します．少量のニコチンを，何度でも，脳の快感中枢に急速注入できるので，喫煙は理想的なニコチン摂取方法だったわけです．量も自分で適当に調整もできます．
一般的に覚醒剤などのドラッグが，止められないのは，脳内のドラッグの濃度が急激に上がる時に快感を感じるためです．その快感は，覚醒剤などでは皆さんが味わったことのない「素晴らしい快感」で，一度，使い出したら，二度と止められなくなります．ドラッグは，何の努力もなく，天国に到達できます．但し，その後すぐに，地獄が待っていることは皆さんがご存じの通りです．最初は「快感」を求めて覚醒剤を使いますが，次第に，気が狂いそうになる禁断症状がつらくてに使い続けるハメになります．
ニコチンも覚醒剤と同族のドラッグです．数時間，禁煙をして，タバコを吸ったときのことをイメージしてください．深く吸った瞬間に，クラクラ，何とも言えない安堵感，爽快感がありますよね．これは，天国までは行かなくても部屋の天井までは浮いています．この快感があるために，禁煙は続きません．死ぬまで使い続けるハメになります．
ニコチンパッチは，一定量のニコチンがゆっくり皮膚から吸収されるので，快感はありません．「一日中，ゆっくりふかしタバコをしているような感じ」「吸い終わって，もう一本吸おうかどうか，迷うような感じ．吸う必要は無いんだけど，少し物足りない感じ．」そんな感想をいう方が多いです．快感はないが，禁断症状も感じない量が，目指すべき量です．個人によってその必要量は当然違いますが，調整が上手にできれば，後は貼り続けると，必ず，ニコチンパッチが要らない時期が来ます．
手術前に絶食をする患者さんは，食事の代わりに，ブドウ糖の点滴を受けます．食事が出てきて，食べたい気持ちはあっても，常に血糖値が高いので，我慢は容易です．ニコチンパッチは，ブドウ糖の点滴と考えると分かりやすいと思います．
食事の前に，お菓子を食べてしまうと，おいしい食事でも食べたくなくなるのと同じです．
必要量を決めるのは，皆さん，個人です．「つらくない量」を早く見つけた人が勝ちです．最初は，非常に効果があって，魔法の薬に見えます．一生止められないのではないかと疑う人がいるくらいですが，心配は不要です．貼り続けると，次第に，タバコへの欲求が減っていきます．これは不思議ですが，僕が見てきた1200名を越す人で，２ヶ月以上使いづけた人はごくごく少数です．一ヶ月もすると，「こんなの要らない」と言い出す人が大部分です．
ニコチンパッチには快感が無いからだと思います．
最初にケチらないで，つらければ，どんどん使っていった人が勝ちです．我慢はしていけません．信じてニコチンパッチに頼り切る感じで使用してみてください．
Ｑ２．ニコチンパッチを貼って，どんな感じになれば十分なのか？
吸いたいんだけど，なんとなく足りている感じが理想です．吸いたくなるのを回数で数えられれば，十分効いていると考えましょう．何をしても，ずっと吸いたいのが続くならば，必要量に達していないと考えましょう．
＜詳細＞ニコチンパッチを貼ると，最初の一時間くらいは貼った場所が重苦しいと感じる方が大部分です．力が入らないというような訴えをする方も居ます．皮膚からニコチンが入るので，違和感があるためと思います．しばらく，我慢していると落ち着く方が多いようです．よく分かる方は，舌でニコチンの味が分かるという人も少なくないです．からだ中にニコチンが回るからです．
吸いたい感じは常にあるかも知れませんが，大事なポイントは，忘れている時間が間にあるかどうかと思います．数分間は吸いたくなるんだけど，電話をしたり，お茶を飲んだり，深呼吸をしている内に，なんとなく忘れてしまう．また，１時間くらいして，思い出すんだけど，また，歯磨きをしたり，おしゃべりをしていると忘れるような，感じです．
思い出す回数を数えられるようなら，十分と思ってください．
いつまでも吸いたくて吸いたくてタバコが頭から離れない場合は，あなたの意志が弱いのではなく，ニコチンが必要量入っていないと考えてください．パッチを増やすことを考えてください．量を増やすときには，動悸や頭痛などが起こる場合があるので，注意をしてください．
Q3.ニコチンパッチの減量のタイミングは？
貼り忘れが始まったら，減量できる時期が来たと考えましょう
＜詳細＞ ３週間近く貼り続けると，朝，貼るのを忘れて会社に行ってしまうような事が始まります．昼に，「今日はやけに吸いたいな」と思うと，貼っていないことに気が付くような事が起こる場合が多いようです．この時期になったら，減量ができる時期が来ていると考えます．
特に努力もなく，貼り続けることで，要らなくなって来ます．無理に，早く減らそう，早く止めようと考えて，途中で，無理矢理止めてしまったり，日によって貼ったり貼らなかったりするのは厳禁です．ニコチン濃度を一定に保たないで，急激に減らしたり，増やしたりすることは，吸いたい気持ちをいつまでも長引かせる事になります．自己流の人は，失敗する人が多いです．
もし，減量にチャレンジしたかったら，ニコチンパッチの裏にセロハンテープを貼って減量するなどのゆっくり減量を試してみてください．突然，ゼロにするのは最悪です．ゆっくり階段状に量を下げていきましょう．「苦しまないで，禁煙」を目指しましょう．
苦しんで無理やり，ニコチンパッチを短時間で止めてしまうことは勧めません．最初の目的は「楽をして止める」だからです． 目標は，一生止めること． ニコチンパッチを短時間で止めるレースをしているわけではないのです．「どうやったら，一生吸わないで居られるか」「どうやったら楽に止められるか」これを最重点事項としてやってみましょう．
「諦めて２ヶ月間，貼り続けよう」 かえって，割り切った人の方が早く止められるようです．
Q４．いつまでも，タバコが吸いたい．いつ，忘れられるのか？
残念ですが，タバコを忘れることはできません．タバコを思い出すのは，あなたの前向きな努力の裏返しです．「いくら思い出しても，いい．思い出すことと，実際に吸ってしまうのは，全く次元の違う話」と割り切りましょう．次第に思い出す間隔は開いていきます．
＜詳細＞ ニコチンは中毒性薬物です．脳の快楽中枢の深い所に作用しますから，麻薬や覚醒剤などと同じように，忘れることはありません．一生，思い出すと割り切った方がいいと思います．
ただし，思い出すという状況もだんだん客観的になって「昔はこんな時に吸っていたよな」というような，冷静な思い出し方に代わっていく場合が多いようです．次第に思い出すのも減りますが，ゼロにもなりません．やっかいですが，それだけ，ニコチンが強い中毒性薬物ということです． ニコチンを甘く見ないで，厳しい態度で，はねのけましょう．思い出すのは，自分の努力の良い証拠と，常に前向きに考えましょう．
途中で，一本吸ってしまった人で，また，禁煙を継続できる人は，皆無に近いです．「今日は特別な日だから・・」を繰り返しているうちに，戻るのは早いです．いざ，再度，禁煙しようと思っても，戻ることは不可能と思います．
「一本吸うのも，百本吸うもの，同じ」「一本吸ったら，禁煙はすべて終わり」
これは間違いありません．
Ｑ５．禁煙で肺はきれいになるのか？
一度，汚れた肺はきれいにはならないですが，種々のリスク約5-10年でタバコを吸わない人と同じ程度の下がります．同じやるなら，とにかく，ダメージの少ない今すぐに，始めた方が良いのです．